世界的に著名なアーティスト、アレクサンダー ゲルマン氏と石川県山中漆器職人たちがタッグを組み、このほど、漆のチェスセットを完成させました。その初めてのお披露目をギャラリー燕子花で1月14日から2月1日まで行います。
「まるで宝石を見ているかのよう」と、表現されるこのチェスセットは、エレガントで気品高く、光を受けて、艶やかに輝きあふれます。漆黒と金、銀、プラチナ、そして木目を自然のままに引き出す拭き漆、朱漆が、音域を広げてさまざまなハーモニーを奏でるので、眺めているだけでも、漆の魅力を再発見し、引き込まれていきます。
特筆すべき点は、漆が、“美しい”ばかりでなく“用”として、私たちの暮らしにある、ということです。これまでテーブルウェアを主体に愛でてきた日本人の”用の美”=漆が、世界中、何千万人という人々が興じるチェスの“用の美”となりました。
チェスは、これまで数多くの世界的なアーティストたちを魅了し、デザインされてきました。ピカソ、マルセル・デュシャン、マン・レイのほか、イサム・ノグチ、オノ・ヨーコ、ダミアン・ハーストもまた、知性の代名詞とも呼ばれるこの工芸品を手がけています。そして、今回、日本の伝統文化の技と感性が、ゲルマン氏のデザインにより、世界にまたとない傑作となりました。嬉しいことに、九谷焼を代表する二人の上 絵師も参加、チェス駒に美しく精緻な文様を描き上げています。
どうぞこの機会にお越しいただき、まだ誰も目にしたことのない傑作に触れていただけましたら幸いです。
過去と未来の橋渡し アレクサンダー・ゲルマン
世界じゅうで使い捨ての文化が横行するなか、私は、何世代にもわたって受け継がれてきた智慧と精巧さと一流の技をもつ職人たちの仕事に携わる機会を得たことを尊く思い、さらなる創造を刺激された。
妥協なき創造性と技術をもち、完璧を追求する同志たちとのコラボレーションにより、ひとりひとりの才能が余すことなく引き出される。
そしてこのコラボレーションは、過去と未来の橋渡しとなる。
思考と伝統と意味とを具現化し、末永く残る「もの」をつくる……これほど楽しいことはない。
心底、参った 山中漆器の職人たち
漆をデザインする作家やアーティストはこれまでもたくさんいた。
でも今回、何が驚いたって、これまで漆の触感を追求してきた人はいなかった。
見て愛でるというのも、当然ある。でも、僕たちは、ほかの工芸品にはない、漆の最大の特徴は触感だと思っている。それをゲルマンさんが、直線や曲線、さまざまなラインの漆をつくり、徹底的に触感を追求していることを知ったとき、鳥肌が立った。もうひとつは、つくりあげていくプロセスで、これまでつくったことのない形状が多かったので、木の面のとりかたや塗りのことなど、ずいぶんと話し合った。僕たちが、これはできない、と説明すると、こうしたらできないか、と聞いてきた。考えてもみなかったけれど、確かに、できる、ということがあった。彼は職人の仕事をよく理解していた。
短い期間で仕上げなくてはならなくて、みんなとても大変だったけれど、彼の最高以外は不要という、あの精神力というか思いの強さが、チームを引っ張ったんだと思う。最高への追求は、僕たち、山中漆器の職人たちの伝統であり、未来だから、僕たちも仕上がったチェスセットには、とても満足している。彼のデザインは、見事に山中漆の技法にかなっているということに気づいたとき、心底、参った、と思ったね。この人についていこうと思ったよ。
展示内容
漆のチェスセット
駒 黒漆、朱漆、拭き漆、金蒔絵、金箔、プラチナ箔
卓 黒漆に、升目が金蒔絵、銀、金箔
九谷焼のチェス駒
絵細描「網手」と「小紋手」
盛金技法「白粒」と「黒粒」
製作者
山中漆器
挽物・拭漆 中嶋武仁
卓下地・塗 亀田泰
駒下地・塗 清水一人
蒔絵金溜 大下宗香
蒔絵銀平文・金地 東藤達也
蒔絵金箔・プラチナ箔 針谷祐之
卓 木地 松井裕志
自転車塗 要明正己
九谷焼
素地師(置物)木田立
上絵師(赤絵) 福島武山
上絵師(白粒) 仲田錦玉
協力 一般財団法人 Globally Local Media
社団法人石川県観光連盟
山中漆器連合協同組合
財団法人山中漆器産業技術センター
九谷絢(中田吉紀、宮崎政司、中村司、岩田克久)
稲場美和子
取材問合先
オフィス ブラインド スポット
平塚一恵
Phone: 03 3423 1804